ファンタジーを読む③

空色勾玉 著:萩原則子   ★★★

 

日本神話をじっくりと知ろうとしたことがなかった。

でも、この物語を読むと神話がぐっと身近に感じられる。もっと知りたくなる。

 

物質的な幸せだけが幸せではないといわれて久しいが、資本主義は加速し、「拝金主義」「大量消費」がはびこっている。私自身お金のことは大好きだし、便利な世の中にあることを幸福に思うので、それ自体を否定する気はない。

 

ただ、この物語を読むと、物を丁寧に使い、長く大切に使うことを頑張っていた子供自体を思い出す。あの頃の私は、本で読んだのか「八百万の神」とまではいかなくとも、物にも魂が宿っているかのように感じ、今よりもずっと身の回りの物を大切にしていた。

 

この物語に登場する「神と人がもっと近かった時代」の空気感とは、子供のころのあの感覚に近いだろうか。

 

本に登場する神々は少々人間臭く、だからこそ普遍のものとして感情移入できる。実は「古事記」に登場する神々も人間臭いらしいのだ。日本神話への導入としてもとてもおすすめな一作だと思う。

 

光の帝国 常野物語 著:恩田陸 ★

短編の物語が少しずつ重なり合い、読み終えると優しい気持ちに包まれる。

常野一族は不思議な能力の持ち主。時代を超えて生まれ変わり、異なる形で役割を果たしていく。

 

この一冊ですべての物語の伏線が回収されるわけではない、全貌が全くわからないので、常野シリーズで今回の登場人物達がどのような結末を迎えるのか楽しみでならない。